南極ドームふじ氷床コア分析
図1:南極ドームふじ基地
ドームふじ基地は、南極における日本の氷床深層コア掘削拠点です。同基地の年平均気温は-58°C,標高は3810mで、南極でも最も自然環境が厳しい基地のひとつです。1995年から1996年にかけて、深さ2504m、時間にして過去34万年にもおよぶ氷床コアが国立極地研究所を中心とした日本の雪氷グループによって掘削されました。この氷床コアは、ロシアのボストーク基地で掘られたコアに次いで世界で2番目に遠い過去まで遡れる、たいへん貴重な研究試料です。私たちはこのコアの空気成分の分析を一手に任されています。
図2:南極ドームふじ基地の位置の模式図(左)と掘削直後の氷床コア(右)
ドームふじ氷床コアより得られた過去34万年にわたる温室効果気体の変動
図3:ドームふじ氷床コアより得られた過去34万年にわたる大気組成の変動
図3は、ドームふじ氷床コアから得た過去34万年にわたる気温と大気中の二酸化炭素(CO2)濃度の変動,海底コア研究から知られている過去の海水面の変動とを比較したものです。なお海水面は大陸上にある氷の量で決まり,最も海面が下がった時期には,南極氷床2個分に匹敵する膨大な量の氷が,アメリカ大陸やヨーロッパを中心とした陸地を覆っていた計算になります。気温と海水面変動とが調和的に変動していることから,南極内陸の気候がグローバルな気候と調和的に変動していたことが分かります。
このグラフから,過去34万年の間には,温暖かつ海水面が現在と同じくらいの「間氷期」が現在を含めて4回あり(黄色で塗られた部分),それ以外の時期の大部分は寒冷な「氷期」だったことが分かります。CO2濃度は南極の気温と密接に関係していて,間氷期に高く氷期に低いことから,気候変動によって温室効果気体の循環が大きく変化していたことが分かります。さらに,氷期から間氷期に向かって気温が急上昇するとき,CO2濃度も同期して上昇しています。これは,氷期-間氷期の移行初期の温暖化がCO2濃度を上昇させ,その温室効果によってさらに温暖化が進み,それがCO2濃度をさらに上昇させるといった,気候とCO2の間の正のフィードバック,あるいはCO2による気候変動の増幅作用が,過去に働いていたことを示唆しています。
参考文献
(ドームふじコアの気体分析による二酸化炭素濃度)
Kawamura, K., T. Nakazawa, S. Aoki, S. Sugawara, Y. Fujii, and O. Watanabe (2003), Atmospheric CO2 variations over the last three glacial-interglacial climatic cycles deduced from the Dome Fuji deep ice core, Antarctica using a wet extraction technique, Tellus B, 55, 126-137.
(ドームふじの気温)
Watanabe, O., J. Jouzel, S. Johnsen, F. Parrenin, H. Shoji, and N. Yoshida (2003), Homogeneous climate variability across East Antarctica over the past three glacial cycles, Nature, 422, 509-512.
Uemura, R., N. Yoshida, N. Kurita, M. Nakawo, and O. Watanabe (2004), An observation-based method for reconstructing ocean surface changes using a 340,000-year deuterium excess record from the Dome Fuji ice core, Antarctica, Geophys. Res. Lett., 31, doi:10.1029/2004GL019954.
(海底コア研究より得られた海水面)
Waelbroeck, C., L. Labeyrie, E. Michel, J. C. Duplessy, J. F. McManus, K. Lambeck, E. Balbon, and M. Labracherie (2002), Sea-level and deep water temperature changes derived from benthic foraminifera isotopic records, Quat. Sci. Rev., 21, 295-305.
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